Catalystを超えて: データの未来に対するEnigmaのビジョン

in #enigamacatalyst7 years ago

自分自身の暗号通貨ヘッジファンドを誰でも始めることができるプラットフォームであるCatalystが、安全かつオープンなデータマーケットプレイスを作るというEnigmaの本来のビジョンとどのように関係しているのか。このような声がコミュニティの中からいくつか聞こえてきました。本記事は、弊社の壮大な構想に光を当てると同時に、Catalystと弊社のビジョンとのつながりについて説明する二部構成のブログの前編となります。後編では、データマーケットプレイスプロトコルについてさらに詳しく説明する予定です。

価値としてのデータ

過去10年間にわたって、データはもっとも価値のあるデジタル資産になりました。既存の大企業の中には、収益に関しては言うまでもなく、大規模なデータセットの消費と分析を事業の核としているものもあります。ブルームバーグやトムソン・ロイターのような企業は、データ集約を中心とした企業帝国を作り上げています。両社は、合計すると200億ドル以上もの収益を上げています。

顧客の生み出すデータを収益化することによって大きな成功を収めている企業は数えきれないほど存在しています。金融の分野では、YoddleやPlaidがその最たるものでしょう。その他には、FacebookやGoogleのようなテック系の大企業は言うまでもなく、 Foursquareのようなロケーションデータ駆動型の企業もあり、主にデータの収集とその収益化を行っています。

しかし、私たちの経済において重要な役割を果たしているのにも関わらず、データはまだほんの一握りの大規模な組織の手中に集約されたままとなっています。そのような組織以外では、データは代替可能なものでも取引可能なものでもないのです。

Enigmaのホワイトペーパーの発表は2015年にまで遡りますが、 その時以来弊社はデータのサイロを解体し、データの共有を可能にすることを1つの目標としてきました。この目標を達成するためには、分散型データマーケットプレイスのための単一のオープンソースのプロトコルが必要であると考えています。そのプロトコルでは、インセンティブと引き換えにデータをオープンに交換することが可能となります。

この信念を追い求めるにあたって、私たちは決して一人ではありません。ここ2、3ヶ月の内に、ホワイトペーパーは100,000回以上ダウンロードされており、WIRED、FastCompany、Coindesk、IBTimesのような高く評価されている報道機関によっても報道されています。さらに、世界でも最も優れたベンチャーキャピタル数社が弊社のビジョンを達成するためのサポートをしてくれています。その中には、Floodgate(LyftやOktaの初期の投資家)、Flybridge(MongoDBの初期の投資家)、Digital Currency GroupとPantera(どちらもブロックチェーンと暗号通貨業界でのトップの投資家です)が含まれています。

弊社の目標は、実現するのに何年もかかるような非常に高い目標です。しかし、もしうまくいけば、以下のようなことを実現することができます。

  • より多くのオープンなデータが研究目的で利用可能となる
  • より多くの人や組織がデータを販売したり管理したりすることから利益を得ることが可能となる
  • データの価値が暗黙的なものではなく、明示的なものになる
  • ビットコインが支払いに革命を起こしたのと同じように、データ共有にも革命がもたらされる可能性がある

未来に向かって

Enigmaでは、内部的にだけでなく、コミュニティとも長い時間をかけて議論を重ね、どのようにすれば弊社の使命を果たすことができるかについて話し合ってきました。その結果、技術を確立するということは知的に刺激されることではありますが、それだけでは失敗してしまう恐れがあるということが明らかになってきました。これは、暗号通貨の世界で繰り返し見受けられるテーマです。つまり、優れた技術を持ったプロジェクトであっても、役に立つプロダクトを作ったり、一般に受け入れられるようにしたりするということに費やす時間があまりに少なすぎるのです。これは危険なことです。というのも、現時点ではトークンの価格は主に投機によって動かされているためです。価値とは、暗号通貨マーケットが自立可能になるために必要なことなのです。

技術はそれだけでは十分ではないため、弊社では人々に好まれ、すぐに使ってもらえるようなプロダクトを考え出す必要がありました。そのプロダクトは、データマーケットプレイスが機能することを本質的に必要とするものです。歴史的に見て、金融データはもっとも価値のあるデータです。シタデル(Citadel)、ツーシグマ(Two Sigma)、ルネッサンス(Renaissance)のようなトップのヘッジファンドでは、質の高いデータに対して毎年何千万ドルにも及ぶ資金が費やされています。これは、この業界における2大マンモス企業であるブルームバーグとトムソン・ロイターがここまで突出して成長している理由でもあります。さらに、このようなファンドでは主にデータサイエンティストが雇われており、データと研究を通して優位性が生み出されています。従来のマーケットでは、データおよびリサーチ駆動型のクオンツトレーディングが勝利の方程式となっていますが、そのような安定したツールは暗号通貨のマーケットではまだ存在していません。

このようなことから、私たちはCatalystを考え出すこととなりました。Catalystは、クオンツが暗号通貨ヘッジファンドを始めるのに必要なツールとデータを提供するプラットフォームであり、他の人は後でそのファンドに投資することができます。まだ発生したばかりの分野であるため、現時点では暗号通貨のデータは標準化されていません。暗号通貨のほとんどはオープンになっていますが、散在しており、採掘するのが難しく、入手するのに時間がかかってしまいます。この問題はクオンツを超えて広がっており、エコシステム全体を覆っています。例えば、MITでは、暗号通貨の利用法を中心とした複数の研究が進行中ですが、そのような研究でもデータ収集に何週間も要しています。なぜ簡単にアクセスできるデータセットが存在しないのか、私たちはしばしば疑問に感じていました。

弊社は、シタデルやツーシグマのようなトップ企業出身の約40人のクオンツとこれまで対談を行ってきました。お話をさせて頂いた人の70%以上が、自分たちのクオンツトレーディングのノウハウを暗号通貨に生かすことに非常に強く興味を持っていましたが、そのための強力なツールがないということでした。私たちには、積極的に暗号通貨のトレーディングヘッジファンドを運用しているアドバイザーがいます。そのようなアドバイザーでも、ファンドの投資決定を促進するのに十分なプロダクトを作るのに6ヶ月もかかっています。弊社は、このような困難さが大きな参入障壁になっているのではないかと考えています。このようなことをすべてつなぎ合わせることによって、現実的で直接的なユースケースに重点的に取り組むことができると確信しています。

このようなことが、弊社のネーミングの背後にある論理についても説明してくれることを期待しています。Enigmaとは、分散型データマーケットプロトコルに対してつけられた名前です。それはまた、その背後にある企業の名前でもあります。そして、Catalystは分散型プロトコルの導入を促進するための初のアプリケーションであり、いつの日かWeb上のデータのロングテールを保持するようになると期待しています。その名前が示すように、Catalystはこのプロトコルの導入を促進することを意図しています。

最後に、ECAT (Enigma Catalyst tokens)はプロトコルトークンであり、データの共有や交換に結びつけられています。初期段階ではECATはプロトコルの導入を奨励するためにも使用されますが、長期的にはトークンはCatalystを超えて拡大し、分散型データマーケットプレイスでデータを提供するあらゆるアプリケーションで使用されるようになります。

この記事が、Catalystが弊社の大きなビジョンとどのように相互作用するのかについての混乱を緩和してくれる一助となることに期待しています。弊社のビジョンは、Webのためのデータマーケットプレイスを作ることです。これは野心的なミッションですが、コミュニティの支援、アドバイザーからの助言、優れたチームがあれば、大きな成果をあげられるのではないかと確信しています。次のパートでは、技術的にさらに詳しくデータマーケットプレイスについての説明を行いたいと思います。それまでの間、SlackTelegramに参加し、質問、コメント、議論などを投稿して頂ければ幸いです。