共働きと片働きどちらがリスクが低いのか?

in #japanese7 years ago (edited)

なにかのニュースを見た際に、「夫婦共働き世帯のほうが収入が二箇所からあるので、リスクを減らせるよね」という話があったんですが、必ずしもそうとはいえないんじゃないか?思ったのでまとめてみた。

間違いがあったら教えてほしいです。

基本的な考え方

  • 情報システムにおける稼働率(故障率)の考え方を取り入れる
  • 家族内で収入のある人を装置として考え、システム(家族)全体の稼働率を考える

稼働率の計算方法


(引用: 初級シスアド講座 稼働率

情報システムの設計あるいは情報処理技術者試験を受けたことのある人ならみたことのある図だと思う。

An は稼働率であり、稼働率 An は 1 - 故障率 で求められる。

詳しくは、初級シスアド講座 稼働率 がわかりやすいのでそちらを参照のこと。

前提条件

シンプルに考えるために以下の前提条件とする。

  • 夫と妻でそれぞれの年収は同じ
  • 夫と妻で故障率(= 収入がなくなる)確率は同じ
  • 得られた収入のうち50%以上を生活費として支出している

共働きのほうが「万が一」の発生確率が高い

前提条件のもとでは、夫と妻のいずれか一方でも職を失うと生活を見直す必要がある。

この夫婦生活は、直列な装置で構成されたシステムと考えられる。片方の装置が故障すると、システム全体が正常に動作しない。

つまり、共働きの稼働率は、以下のようになる。

稼働率 = (1 - 故障率)* (1 - 故障率)

一方、片働きの場合、稼働率は以下のとおりとなる。

稼働率 = (1 - 故障率)

故障率が1%だとすると、稼働率はそれぞれ次のとおりとなる。

  • 共働き: 98.01%
  • 片働き: 99.00%

よって、片働きのほうが夫婦生活よりも稼働率が高い。
言い換えると、共働きのほうが「万が一」の発生確率が高い。

つまり、「現状の生活水準を継続すること」を目的とした場合、片働きのほうが継続しやすいと言えるだろう。

万が一のときは、共働きのほうが生活を継続しやすい

ただし、万が一が発生してから生活水準を下げてでも生活を継続するという意味では、共働きのほうがよさそうだ。

万が一のときは、片働きだろうが共働きだろうが生活の継続には大きな変化を伴うことが予想される。

片働きだと、収入が0になってしまうためよりその変化は大きいと考えられる。共働きであれば、収入が半分維持できるため、その範囲内でやりくりすればシステム(生活)は継続できる。共働きは、いわゆるフェイルセーフの考え方を取り入れているとも言えるだろう。

まとめ

ここまでの内容からわかるように「リスク」とはなにかどう定義するかで、共働きと片働きどちらがリスクが低いのかは変わってくる。

生活水準を下げずに生活を継続できるか?という点では、片働きのほうがリスクが低い。
一方、万が一のときに生活水準を下げてでも生活を継続できるか?という点では、共働きに分がある。

考慮できていない点は多い

今回は非常に単純化したモデルなので、実生活からかけ離れている点も多々あると考えられる。

例えば、以下のような視点は考慮されていない。

  • 家庭内作業
    • 片働きの主婦(主夫)が倒れた場合などに家庭内の作業が滞る可能性がある
  • 当事者の気持ち
    • 社会にでて働きたいという欲求やいきがい
  • 将来、年収が上昇する期待値の違い
  • 万が一のときからの復帰(保険、貯蓄の活用)※MTTR と MTBF の考え方が適用できそう
  • 税金・社会保険など累進制のある支出
  • 生活保護などの社会保障による収入

そういった面も含めて、共働きと片働きどちらが当事者にとってよいか選択する必要がある。

あとリスクは悪ではない。リスクにおびえた生活もつまらないものだろう。

リスクには、「低減」「保有」「回避」「移転」という処置をすべきであって、想定される損害と発生確率、対処へのコストをもとに決定すべきである。(極端な話、リスクへの対処をせず放置してもよい)

おまけ

共働きで生活費を年収の50%にすると見えてくるもの

生活費を年収の50%以下に抑えると、片方の収入がなくなっても生活を継続することができるようになる。

こうなると、並列な装置で構成されたシステムと考えられる。片方の装置が故障しても、システム全体がうまく動作する。

そのときの稼働率は、直列のときの稼働率とは異なり以下のとおりとなる。

稼働率 = 1 - (1 - (1 - 故障率)) * (1 - (1 - 故障率)) 
      = 1 - (故障率 * 故障率)

これまでと同様に故障率を1%としたときの稼働率は、99.99%となる。

これは、先に述べた片働きよりも稼働率が高い。情報システムでいうフェイルオーバーの発想だ。

ただ、支出を収入の50%で抑えるというのは本当にできるのだろうかという点と、本当にそれは幸せなのだろうか?という疑問は残る。

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