俺はあの女を許さない。断じて許さない。俺はセクハラなんかしていない! 確かに「早く結婚して家庭の主婦になったほうがいいぞ」とは言った。でも、それがなんでセクハラになるのか? あの女のせいで、今や俺は生活保護者。職も家庭も失った。
俺はあの女に復讐すべく鬼龍院に復讐代行を願い出た。彼女は近々結婚する予定らしい。しかも、職場ではぬくぬくと主任の座に昇格している。てめぇーから幸せを奪い取ってやる。復讐代行の料金は100万。破格の値段だ。そこで鬼龍院が切りだしたのは俺の寿命だった。
俺には失うものはもう何もない。長生きするつもりもない。だから代金として俺の寿命を一年分支払った。一年くらい早く死んでもいい、と思った。結果は良好。女はバーでバイトをしているのが会社にバレて首。男とも別れた。
ある日の午後、女が男と楽しそうに歩いているのを発見。別れてねーじゃないか。鬼龍院のやつ、騙しやがったな。俺はすぐに鬼龍院に電話した。奴らは復縁して再び付き合い始めているとのこと。復縁する可能性を考えなかった俺のミスだという。
俺は惨めだ。愛する家族を失い、孤独に耐えている。俺はあの女にはめられたんだ! 殺してやる! 俺は鬼龍院にもう五年分の命を払った。
全てはうまくいく予定だった。しかし、ある日の朝、どこからともなく奇妙な音楽が聞こえてきた。耳を澄ますと、どうやらその雑音ともいえる不思議な音は俺の体から聞こえてきていたのだ。音と一緒に大量の音符が体から出てきて部屋中をぐるぐると旋回し始めた。ドンドン切り裂かれる俺の皮膚! 音符は目にもとまらぬ速さで旋回しはじめ、女の姿に変わった。
女は言った。「あなたも私も鬼龍院に依頼しています。しかし、残念なことに、私のほうが先にお願いしました。早くお願いしたほうが優先されるのよ。私は夜も昼も一生懸命働いたわ。あなたと違って私は鬼龍院に現金で払いましたからね。彼の無念を晴らすために。今更ジタバタしても無駄よ。」
「どういうことだ?」俺はうろたえた。
「私の彼は、あなたの部下でした。あなたのパワハラを受けて自殺したわ。覚えているわよね。あれほどのひどい行為をしておいて、あなたはウソの証言をして自分の身を守ったのよ。会社もあなたの方を信じた。結果、彼は人間不信になって死んだわ。」
「だ、だれのことを言っているんだ! 俺はパワハラなんかしていない」俺の目はかなり同様していたと思う。はっきりと覚えている。あいつだ。まさか自殺するとは思ってもいなかった。
「あなたのもともとの寿命は46歳と二時間です。鬼龍院さんに6年分の命を支払いましたね。今、あなたは40歳。あと二時間の命です。」
一瞬、風を切るような音がしたかと思うと、女の姿が消えた。バサッという音と共に畳の上には大量の音符が降ってきた。
俺は夢を見ているに違いない。そう思いたかった。そうこうしているうちに、1つの音符が俺の口をめがけて飛んできた。音符は次々と飛んできて、体の穴という穴に音符が詰め込まれ、体の表面にも張り付いた。アッという間に、俺の体は音符に包まれてしまった。
あれから10年。俺は生きている。あの男の墓に花が絶えることはない。
最後まで読んでくださってありがとうございます。
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ありがとうございます。お受けしました^^
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Thank you🌹
とても面白いストーリーでした!結局、「俺」は「あいつ」にパワハラをしてたんでしょうか??
ありがとうございます。
女から話を聞いてうろたえているところから、誰にもバレないようにパワハラをしていた悪党だと分かります。自殺した「あいつ」のところに花を供え続けているところから、深い後悔の念がうかがえます。
執着しないこと。マスターしたいです。ここだけの話。
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ここだけの話。了解です。私の場合は、だめじゃこりゃ、と思ったらさっさと諦めるのもいいと思っています。